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森林総合研究所、森林の生物多様性がソバの実りを豊かにすることを確認

2010-11-19

森林の生物多様性がソバの実りを豊かにする
−花粉を媒介する昆虫の多様性が結実率を高める−


●ポイント
・森林や草地など多様な植生が周りに豊富なソバ畑では、花粉を媒介する昆虫が多くみられました。
・花粉を媒介する昆虫の多くいるソバ畑では、ソバ結実率は良くなりました。


【 概 要 】
 森林は豊かな生物多様性をささえています。しかし、それが人間の生活にも貢献していること(生態系サービス)はあまり知られていません。そこで、中山間地で栽培されているソバの実のつき具合(結実率)と生物多様性との関係を調べました。ソバの花粉の媒介はハチ、アリ、ハエ、ハナアブハナムグリなどの昆虫が行うので、その結実率は花粉媒介がうまくいくかどうかにかかっています。調査の結果、森林や草地など昆虫の多い植生が周りに豊富なソバ畑では、花粉を媒介する昆虫の数が多く、結実率も良くなることが明らかになりました。今回の研究は、森林など生物多様性の高い植生の存在が、農作物の生産にも貢献した事例です。森林を守ることは、生物多様性の保全を通じて、その生態系サービスを維持する意味があります。

 予算:地球環境研究総合推進費
 「里山イニシアティブに資する森林生態系サービス(H20−22)」


【 研究の社会的背景 】
 生物多様性という言葉は、希少種の絶滅などへの関心の高まりとともに、社会に広く知れ渡るようになりつつあります。しかし、生物多様性は人間の生活に役立っているということはあまり知られていません。生物多様性がもたらす生態系の機能(サービス)を科学的に検証することが求められています。


【 研究の内容・意義 】
 ソバの花が実になるには、雄しべから雌しべへの花粉の媒介が必要です。ソバの花粉の媒介は森林や草地など、農地以外の生物多様性の高い植生に多く生息しているハチ、アリ、ハエ、ハナアブハナムグリなどの昆虫が行います(写真2)。茨城県常陸太田市において、周辺環境の異なる様々なソバ畑で、花を訪れる昆虫の種類や数、ソバの実のつき具合(結実率)の調査を行った結果、森林や草地など生物多様性の高い植生が周りに豊富なソバ畑では、花粉を媒介する昆虫の数が多く(図1)、結実率も良くなることが明らかになりました(図2)。今回の研究は、森林など生物多様性の豊かな植生の存在が、山里の農作物の生産にも貢献している実例といえます。森林を守ることは、生物多様性の保全を通じて、生態系サービスを守ることに繋がります。


【 共同研究機関 】
 神戸大学北海道大学


【 本成果の掲載論文 】
 タイトル:Effects of landscape metrics on Apis and non−Apis pollinators and seed set in common buckwheat(ソバにおけるミツバチとそれ以外の送粉者ならびに結実に影響する景観要素)

著者:滝久智(森林昆虫研究領域)、岡部貴美子(森林昆虫研究領域)、山浦悠一(北海道大学)、松浦俊也(森林管理研究領域)、末吉昌宏(九州支所)、牧野俊一(森林昆虫研究領域)、前藤薫(神戸大学

掲載誌:Basic and Applied Ecology(基礎と応用生態学、ドイツ・オーストリア・スイス)、発行号:未定(Online は公表済み)


※図、表、写真等などは添付の関連資料を参照

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