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日本無線、東京工業大などと共同で毎秒1G ビットで4km 伝送可能なミリ波帯無線システムを開発

2012-02-03

毎秒1G ビットで4km 伝送可能なミリ波帯無線システムを開発
光ファイバーネットワークと無線ネットワークをシームレスに接続 〜


 日本無線株式会社(本社:東京都杉並区、代表取締役社長:土田隆平 以下JRC 日本無線)は、東京工業大学大学院理工学研究科の安藤真教授・松澤昭教授などと共同で、光ファイバーネットワークにシームレスに接続できる毎秒1 ギガビット(1Gbps)の「38GHz ミリ波帯固定無線アクセス(FWA)システム」を開発しました。高効率の小型アンテナ、64QAM 変調方式が使える高性能アナログ/デジタル(A/D)変換器など多くの要素技術を結集し、通信速度を1Gbps に向上させるとともに4km の長距離伝送を達成しました。
 無線での幹線接続を担うFWA はこれまで通信速度が毎秒100〜200 メガビット(100〜200Mbps)程度と遅く、光ファイバーネットワークとのシームレス接続は困難でした。同システムの開発は、シームレス接続の実現とともに、ミリ波帯の周波数資源を開拓したものです。携帯電話基地局の基幹無線回線などに利用することで、近年の電波利用ニーズの増大による周波数資源の逼迫状況を緩和できるほか、敷設が容易なので素早い超高速無線ネットワーク構築が可能となります。

●研究開発の背景
 スマートフォンの爆発的な増加などによる近年のIP ネットワークの世界的な規模拡大と、これに付随したアプリケーションサービスの多様化から、ネットワークの大容量化が求められています。これは、光ファイバーネットワークだけではなく、敷設が容易で災害時に復旧の早い無線ネットワークについても同様です。一方、携帯電話をはじめとする移動体通信や無線LAN などの公衆無線サービスが普及したため10GHz 以下の無線周波数が逼迫しており、既存の周波数帯を使用する限り、これ以上の広帯域化、大容量化は困難な状況です。

●研究開発の成果と意義
 そこで、JRC 日本無線と東京工業大学などは、広い帯域が確保できるミリ波帯に注目し、ミリ波帯で使えるさまざまな機器やデバイスの開発を行いました。主な開発技術は、(1)ミリ波帯の特質を生かした高空間アイソレーション送受信別体小型アンテナ、(2)超高速かつ高分解能なA/D・D/A 変換器や多値QAM 変復調回路を搭載したベースバンド信号処理システムLSI、(3)高能率送信電力増幅窒化ガリウムモノリシックマイクロ波集積回路(GaNMMIC)、(4)超低雑音増幅インジウム・リン(InP)MMIC、(5)広帯域周波数変換ガリウム・ヒ素(GaAs)MMIC、(6)I/Q直交変復調用シリコン・ゲルマニウム(SiGe)MMIC −などです。
 これらのデバイスを統合し、シンボル伝送速度毎秒200 メガシンボル(200Msps)、シングルキャリアTDD(時分割複信)方式、かつ最大変調方式64QAM で動作する、38GHz ミリ波帯固定無線アクセスシステムを実現しました。同システムは1Gbps の実効伝送速度(上下回線を合わせた伝送速度)で動作させることができ、最大通信距離は4km です。東京工業大学 大岡山キャンパスに12 回線を設置して無線ネットワークを構築し、屋外伝送実験を行い性能を確認しました。現在、100m から4000m 程度の通信距離で無線回線を配置した無線ネットワークを構築し、ミリ波帯での降雨の影響や長期的な安定性を確認するとともに、ミリ波帯無線システムの有効性の実証を継続して行っています。今後は同システムの実用化を目指すとともに、ミリ波帯通信の普及を目指した研究開発を進めていきます。なお、本研究は総務省の委託研究「電波資源拡大のための研究開発」の一環として実施しました。

●システム概要
 今回開発した無線システムは、光ファイバーネットワークなどの有線ネットワークにシームレスな接続を行うことで、有線系インフラが整備されていない地域や光ファイバーケーブルの敷設が困難な場所あるいは災害時のインフラ復旧において、迅速かつ容易な高速回線の構築を可能とします。
 システムを実証するため、実験的に採用した無線周波数帯は38GHz 帯で、日本ではFWA システム用に割り当てられた帯域です。通信方式はシングルキャリアTDD 方式、変調方式はQPSK、16QAM、64QAM に対応し、64QAM 運用時に最大実効伝送速度は1Gbps となります。また、本システムは、TDD 方式と適応的に帯域を制御することで、実効的に周波数利用効率を向上するとともに、降雨減衰などにより受信搬送波と雑音の比(CNR)が得られ難くなった場合でも、変調方式を64QAM から16QAM あるいはQPSK へ適応的にシフトすることで、降雨時にも数km までの通信を維持することが可能です。
 今回試作した装置の外観を図1 に、システムの主要諸元を表1 にそれぞれ示します。


 ※参考画像は添付の関連資料を参照


表1 システム主要諸元
 システム構成 : 1対1 通信/固定無線アクセスシステム
 無線周波数  : 38GHz 帯
 通信方式   : シングルキャリアTDD 方式
 変調方式   : QPSK、16QAM、64QAM(適応変調機能)
 送信電力   : 最大250mW(+24dBm)
 無線クロック周波数 : 200MHz
 最大実効伝送速度※ : 1Gbps(適応上下帯域可変制御機能)
 QoS 制御   : 帯域制御、優先制御
 インタフェース : 10/100/1000base-T(RJ-45)イーサーネット
 (※最大伝送速度は上下帯域の合計)

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