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理化学研究所、埼玉大と5社の民間企業で「新世代塗布型電子デバイス技術研究組合」を設立

2012-01-27

理研と埼玉大学、初の「技術研究組合」を設立
−環境にやさしい有機薄膜太陽電池の実用化に向けスクラム−



◇ポイント◇
 ・理研と埼玉大を中心に、5社の民間企業と共同
 ・静電塗布法を利用して、薄膜太陽電池に有用な有機材料や製造装置を開発
 ・水性有機半導体コロイドの薄膜形成技術を開発し、新世代塗布型電子デバイスに応用


 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と国立大学法人埼玉大学(上井喜彦学長)は、2012年1月24日、黒金化成株式会社、FLOX株式会社、有限会社VCADソリューソンズら5社と共同で、「新世代塗布型電子デバイス技術研究組合」を設立します。理研や埼玉大学が保有する有機エレクトロニクスに関する研究成果の早期実用化を目指して、理研和光研究所内に初めて技術研究組合を設立します。

 技術研究組合とは、産業活動で利用される技術の向上及び実用化を図るため、これに関する試験研究を協同で行うことを目的とした技術研究組合法(昭和36年5月6日法律第81号)に基づき設立する組織です。理事長には理研社会知創成事業有機光電子工学研究チームの田島右副 チームリーダーが就任します。

 この組合では、ナノサイズの構造体が形成可能で、しかも低コストで製造できる静電塗布法(※1)を利用して、薄膜形成技術の研究開発を行います。また、資源循環型材料として期待される有機半導体を利用して、薄膜太陽電池に向けた新規有機材料の製造方法開発にも取り組みます。これらの技術により、製造エネルギーを大幅に低減し、水性有機半導体コロイド(※2)などを用いた環境負荷の小さい有機薄膜太陽電池など、新世代塗布型電子デバイスの開発へ貢献していきます。


1.概要
 安価な製造コストと少ないエネルギーで製造できる塗布型電子デバイスは、さまざまな新世代電子デバイスに応用できる可能性があります。中でも、室内光など弱い光でも高い発電効率を発揮する有機薄膜太陽電池は、新たなエネルギー供給デバイスとして世界中の期待が高まっています。真空蒸着法や化学気相成長法でシリコンを製膜した従来の薄膜太陽電池では、10%以上の高い発電効率が得られるものの、製造エネルギーや製造コストの低減が難しいといった課題を抱えていました。一方、有機半導体材料を用いた塗布法による製膜では、大幅な製造エネルギーの低減が期待できますが、発電効率向上と長寿命化のための課題が未解決であり、早期の実用化達成が困難でした。そのため、基礎研究機関と民間企業が保有する知見や技術、ノウハウを持ち寄って相互補完し、それらを取りまとめて成果を出していく組織が求められていました。

 技術研究組合は、産業活動で利用される技術に関して、各機関・企業(組合員)が自らのために共同研究を行う相互扶助組織(非営利共益法人)です。各組合員は、研究者、研究費、設備などを出し合って共同研究を行い、その成果を共同で管理し、組合員相互で活用します。2009年に技術研究組合法が改正され、組合員の資格が明確になったため、基礎研究に関する知見を保有する大学や公的研究機関が加入しやすくなりました。そこで、理研と埼玉大学が中心となって、独自の重要な要素技術を有する他5社の企業と共同で技術研究組合を設立することに合意しました。製造エネルギーと環境負荷の低い有機薄膜太陽電池の製造技術の開発を行い、2013年中にプロトタイプを完成、2015年の実用化を目指していきます。


2.共同研究機関の役割
 理化学研究所:
  1917年に日本で唯一の自然科学の総合研究所として設立され、物理、化学、生物、工学、医科学にわたる広範な分野で、基礎から応用にいたるさまざまな研究を実施、これまでに数多くの研究成果を世に出しています。研究組合では材料、塗布技術、デバイス評価、シミュレーションなどの科学技術を駆使して、塗布型電子デバイスの早期実現に貢献します。

 埼玉大学:
  埼玉大学が2009年度に選定した「超薄膜ナノエンジニアリングによる安心・安全のためのヒューマン・フォトニクス研究拠点形成(矢口裕之リーダー)」という重点研究テーマのもと、理工学研究科は高効率太陽電池の開発を行ってきました。各種有機デバイスや静電塗布法に関する研究を行い、これらの技術を活用して、高効率な有機薄膜太陽電池の実現に重要な有機材料開発や成膜装置開発に貢献します。

 黒金化成株式会社:
  1947年設立。「ケミストリーなくしてサイエンスの発展はあり得ない」との一貫した信条のもと、東海地区でも稀な開発主導型の有機合成化学メーカーとして、確固たる地位を築いてきました。これまでに培ってきた有機合成技術を活かして材料を提供する予定です。

 FLOX株式会社:
  2005年に設立され、フラーレン誘導体の研究・開発・製造・販売・コンサルティングなどを行う理研ベンチャー(理研の研究者が、自らの研究成果を中核技術として起業した企業群)認定企業です。フラーレン誘導体は有機n型半導体として利用が期待されています。

 有限会社VCADソリューソンズ:
  2005年設立。VCADによるボリュームベースの形状表現およびシミュレーションを行っています。ボリュームは自然物にみられる複雑な内部の表現に優れます。今回、微細な視点でのシミュレーションを通じ、製造に役立つ情報を提供する予定です。



<補足説明>
 ※1 静電塗布法
   サンプル試料を充填したガラスキャピラリーに電圧を印加すると、アースに接続した基板との電位差により、キャピラリー先端から正荷電した微細な液滴が電場に沿って基板へ運ばれ、基板上の導電体に積層される。2011年埼玉大学は、静電塗布法で成膜した有機薄膜太陽電池がスピンコート法に匹敵する性能を示すことを報告した。理研は、スピンコート法では不可能だった粘度の極めて低い水系コロイドなどの薄膜作製に静電塗布法を利用する研究を行っている。
 ※2 水性有機半導体コロイド
   導電性高分子やフラーレン誘導体などの有機半導体材料をナノ粒子化し、水中に分散させると得られるコロイド溶液。静電塗布法で成膜することで高性能な半導体薄膜が得られるうえ、有害な溶媒を使用しないため製造時の安全性を改善できる。


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