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JSTと北大、氷の結晶表面上に形状が異なる2種類の表面液体相が生成することを発見
氷の新しい融け方を発見:2種類の異なる表面液体相の生成
〜表面液体相が関わる幅広い現象の機構解明に期待〜
<研究成果のポイント>
・原子・分子高さの段差を直接可視化できる光学顕微鏡を開発して,これまで不可能であった分子レベルで氷結晶表面を観察したところ,融点(0℃)以下の温度で氷の結晶表面上に,形状が全く異なる2種類の表面液体相(注1)が生成することを発見。
・本研究は,スケートの滑りやすさや雪結晶の形の変化,食品や臓器の低温(冷凍)保存,雷雲での電気の発生など,表面液体相が重要な役割を果たす幅広い現象の機構解明に役立つと期待。
<研究成果の概要>
氷の表面は融点(0℃)以下の温度でも融解し,表面液体相(注1)が生成します。表面液体相は,スケートの滑りやすさから雷雲での電気の発生まで,幅広い現象の鍵を握ると考えられており,表面液体相の正体を分子レベルで解明することは大変重要です。これまでは,氷結晶の表面から1種類の液体相が一様に現れると考えられてきました。ところが,北海道大学低温科学研究所の佐崎 元准教授らが,オリンパス株式会社と共同で開発した原子・分子高さの段差を可視化できる光学顕微鏡を用いて観察したところ,氷結晶六角底面上では2種類の表面液体相が生成し,これらは互いに混じり合わずあたかも水面上に雨粒が乗った様な振る舞いを示す(図1)ことを発見しました。
これは,表面液体相についてのこれまでの描像を根底から覆す成果で,今後,表面液体相が重要な役割を果たす幅広い現象の機構解明に役立つと期待されます。
本研究は,JST戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)「光の利用と物質材料・生命機能」(研究総括:増原 宏 台湾国立交通大学 講座教授)研究領域における研究課題「不凍タンパク質作用発現機構の解明を目指したその場光観察」(研究代表者:佐崎 元)の一環として行われ,本研究成果は,米国科学アカデミー紀要(PNAS)のオンライン速報版で2012年1月9日(米国東部時間)に公開される予定です。
<論文発表の概要>
論文名:Quasi−Liquid Layers on Ice Crystal Surfaces Are Made Up of Two Different Phases
(氷結晶上の表面液体相は2つの異なる相からできている)
著者名:佐崎 元(北海道大学,科学技術振興機構),Salvador Zepeda(北海道大学),中坪 俊一(北海道大学),横峰 誠(株式会社東陽テクニカ),古川 義純(北海道大学)
公表雑誌:米国科学アカデミー紀要
公表日:日本時間(現地時間)2012年1月10日(火)午前5時(米国東部時間 2012年1月9日午後3時)
※以下、「研究成果の概要」などリリースの詳細は添付の関連資料を参照