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パナソニック、GaNパワーデバイスに対応した統合設計プラットフォームを開発
世界初*) GaNデバイスモデルを搭載
GaNパワーデバイスに対応した統合設計プラットフォームを開発
*)2011年12月27日、当社調べ。
【要旨】
パナソニック株式会社は、回路設計ツール/熱解析ツール/電磁界解析ツールを複数連携させることで統合的な設計を可能とするプラットフォームを開発しました。本プラットフォーム上に、独自のGaNデバイスモデルと基板の寄生成分モデルとモータモデルを搭載しました。さらに、知識処理を用いて複数のツールを自動的に結合することで、設計に熟練していない技術者でも容易に省エネ性能を向上できます。
【効果】
従来は独立した解析ツールを個別に使用してパワーエレクトロニクス回路を解析しており、ツールごとに高いスキルが要求されていました。本プラットフォームでは、知識処理により複数のツールの相互連携を可能とし、ひとつの設計ツールを使っている感覚で複数の特性を同時に把握することができます。また、低損失GaNデバイスのモデルを搭載しており、省エネ性能を飛躍的に向上するパワーエレクトロニクス機器の設計を可能にします。民生機器の様々な分野への活用が可能で、試作時点での機器全体の特性の把握と設計へのフィードバックが容易に実現できるため、開発効率が向上します。将来的には、分散処理シミュレータを用いてクラウド化することで、誰でも、どこからでも使用可能なパワーエレクトロニクス統合設計プラットフォームの提供を目指します。
【特長および内容】
本プラットフォームは、以下の特長および内容を有しています。
1.本プラットフォームに導入した高精度なGaNデバイスモデル[1]を用いることで、高速駆動時の回路特性を正確に評価できます。
2.基板配線の寄生成分をモデル化し、回路へ自動導入することで、ノイズまで忠実に再現する高精度な統合設計を実現します。
3.人工知能を用いた知識処理により、ツールごとに異なる名称で定義されるデイバスを自動的に対応付け、異種ツールを一体として駆動可能なプラットフォームを実現します。
【従来例】
従来は解析ツールを個別に使用していました。また、GaNパワーデバイス用のパワーエレクトロニクス設計ツールが無く、試作、評価、手直しの繰り返しが必要となり、多くの時間が必要でした。
【特許】
国内 143件、外国 91件(出願中含む)
【備考】
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成をうけて実施しました。
【特長および内容の詳細説明】
1.高精度GaNデバイスモデルで、高速駆動時の回路特性を正確に再現。
電子が捕獲される現象(電子捕獲現象[2])をデバイス物理原理から解明し、電子捕獲現象が電気回路網として表記できることを発見しました。本デバイスモデルをプラットフォームに導入することで、高速駆動時の回路特性の正確な評価が可能になりました。
2.基板配線の寄生成分の抽出と回路への導入を自動化し、高精度な統合設計を実現。
従来高周波回路でしか検討されていなかった配線の寄生成分に、周波数は低いが電流量の大きなパワーエレクトロニクスでも着目。基板配線パターンからの寄生成分を算出して等価回路へ変換し、パワーエレクトロニクス回路への自動導入を実現しました。寄生成分の導入により、ノイズまで忠実に再現する高精度な統合設計が可能であることを実証しました。
3.人工知能を用いた知識処理により、異種ツールを一体として駆動可能なプラットフォームを実現。
オントロジーマッピング[3]を応用した知能処理により、ツールごとに異なるデイバス名称を自動的に符合できることを発見しました。デバイスの自動対応付けを可能として、異なる設計ツールの自動結合による一体駆動を実現しました。
【用語の説明】
[1]GaNデバイスモデル
GaNパワーデバイスは、ガリウム(Ga)と窒素(N)の化合物で、電子の移動速度が大きいため、従来のSiに比べて高速駆動できます。デバイスモデルは、デバイスの内部動作を電気的に表記したものです。
[2]電子捕獲現象
結晶表面や基板との界面などにエネルギーが低い領域が形成され、電子などが捕獲される現象。捕獲された電子は、印加された電界や時間により放出されるため、コンデンサのような振る舞いをします。
[3]オントロジーマッピング
それぞれの文書の内容を説明する意味情報(メタデータ)を各文書に付加し、メタデータを記述する用語を定義する構造のことです。意味情報の類似度から対応関係を自動推定します。
【図】パワーエレクトロニクス統合設計プラットフォームの概念図
※添付の関連資料を参照